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建設業界の【時間外労働規制】とは【働き方改革】の新潮流

建設 施工管理技士

「労働時間の上限」が建設業界にも適用される

2018年に働き方改革関連法が施行され、労働基準法は大幅な改訂を経て時間外労働の上限規制が設けられました。この法改正により、これまでの時間外労働の「36協定」が規制され、時間外労働の上限が明確に決定されるようになりました。

労働基準法には「1日8時間、1週間40時間」の労働時間が定められています。これを超えた場合の残業が法定時間外労働となります。そして、この改正法により、原則として月45時間、年間360時間が時間外労働の上限となり、この時間を超えることは禁止されました。さらに、臨時的な事情があっても、年間720時間、2〜6ヵ月平均で80時間、月100時間を超えることは許されません。

建設業界への適用開始とその影響

建設業界では、これまで法律上の猶予が許されていましたが、2024年4月からは、他業界と同様に時間外労働の上限規制が適用されます。しかし、災害時の復旧・復興作業は例外とされています。

規制違反に対する罰則として、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が定められています。これらの罰則は公共工事の受注にも影響を及ぼすため、企業は労働時間の管理に注意を払うべきです。

建設業界の働き方改革の課題と取り組み

建設業界では、長時間労働の常態化と深刻な労働力不足が問題となっていました。そのため、労働時間の上限規制は5年間の猶予期間を設けられています。

しかしながら、労働者の健康と福祉の観点から、さらには産業の持続可能性を考慮すると、建設業界でも働き方改革の進展が求められています。

そのため、国土交通省は建設業界の働き方改革を推進するための「建設業働き方改革加速化プログラム」を発表しました。このプログラムは、時間外労働の是正、待遇と社会保険制度の改善、生産性の向上といった3つの重要な観点から取り組んでいます。

建設産業における勤怠管理課題の探究と解決策

精確な労働時間追跡の難しさ

厚生労働省は労働者の健康を守るため、労働時間の記録を厳密に監視しています。しかし、建設業は常に移動している現場労働者が大多数であり、時間の追跡が難しい状況にあります。自己申告制を採用している場合、申告された労働時間が実際のものと一致するかを確認する実態調査が求められています。しかし、労働者の分散した勤務地により、日報やタイムカードでの管理は正確性を欠く可能性があります。また、労働者が自己申告した時間を超えて勤務している理由を報告させ、その報告が適正に行われていることを確認する必要があります。

労働時間の検証と集計に費やされる多大な時間

日報やタイムカードを使用した勤怠管理は、手間と時間を必要とします。また、労働時間を過不足なく記録するための正確なチェックも必要であり、その結果、管理作業の労力が増えています。特に、一日で複数の現場に出向く従業員の場合、日報やタイムカードに空白時間が生じる可能性があります。さらに、時間外労働が法定限度を超えていないか確認するためには、時間の累積を常に把握することが必要です。

残業制限に関する管理体制の欠如

労働時間の上限を守るためには、時間外労働の時間と実際の時間外労働数を継続的に確認することが必要です。しかし、アナログな勤怠管理方法では、時間外労働の状況をリアルタイムで知ることが難しく、残業が生じていることを確認できないことが多いです。アナログな管理方法を採用する限り、適切な管理が困難となります。

不明確な有休・休日管理

建設業では、休日が確定しにくい事情があります。これは、長期的なプロジェクトや天候による作業スケジュールの影響を受けやすいからです。この状況は、所定休日の設定や有休管理をあいまいにする傾向にあります。休日を労働に充てると、その時間は時間外労働として計上され、割増賃金が発生します。有給休暇の適切な管理が求められる現在、有休や休日を含む適正な労働管理が必要となっています。

建設業における「時間外労働の上限規制」の守り方

これらの課題が未解決のままでは、建設業界で時間外労働の上限規制を順守することは困難と言えます。「建設業働き方改革加速化プログラム」の目指す「長時間労働の是正」「給与・社会保険の改善」を実現するためには、労働時間を正確に把握し、残業を抑制し、休日を確保し、その結果を給与に反映する体制を構築することが求められます。今後の建設業界の動向が気になります。

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