【トンネル工事】:山岳工法、シールド工法、TBM工法
はじめに
トンネル工事は、山岳地帯や都市部など様々な地盤条件下で、道路、鉄道、水道管などのインフラを整備するために必要不可欠な技術です。施工管理技士は、トンネル工事における専門知識と経験を活かして、安全かつ効率的な施工を実現するために重要な役割を担います。
この記事では、トンネル工事の概要、主要な工法、施工手順、最新の技術、施工管理技士の役割、安全対策、環境対策、コスト、法令、将来展望、トンネル工事における主要な工法である山岳工法、シールド工法、TBM工法について解説します。
1. トンネル工事の概要
トンネル工事は、大きく分けて以下の3つの工程に分けられます。
- 調査:地質調査、水文調査、測量などを行い、トンネル掘削に必要な情報を収集します。
- 掘削:地盤条件や工法に応じて、発破掘削、ドリル掘削、シールドマシンなどの方法を用いてトンネルを掘削します。
- 覆工:トンネル内壁をコンクリートなどで覆い、トンネルを仕上げます。
2. 主要な工法
トンネル工事には、以下の主要な工法があります。
- 山岳工法:岩盤などの硬い地盤で用いられる工法。発破掘削やドリル掘削などの方法を用いて、断面形状を自由に設計できる。
- シールド工法:都市部など地表沈下などの影響を抑えたい場所で用いられる工法。シールドマシンと呼ばれる巨大な機械を用いて、掘削と同時にトンネル壁を構築していく。
- TBM工法:山岳工法とシールド工法の長所を活かした工法。TBMと呼ばれる掘進機を用いて、硬い岩盤を効率的に掘削できる。
1. 山岳工法工事
1.1 概要
山岳工法工事は、岩盤などの硬い地盤でトンネルを掘削する工法です。発破掘削やドリル掘削などの方法を用いて、断面形状を自由に設計できる点が特徴です。機械か発破で岩盤に穴を開け土砂(ズリ)を機関車両で搬出し、セメントを吹付け、鉄筋棒を打込み履工します。
1.2 長所と短所
長所
- 断面形状を自由に設計できる
- 地盤条件に左右されにくい
- 小規模な施工も可能
短所
1.3 施工手順
- 調査:地質調査、水文調査、測量などを行い、トンネル掘削に必要な情報を収集します。
- 掘削:発破掘削やドリル掘削などの方法を用いて、トンネルを掘削します。
- 支保:掘削したトンネルを支えるために、ロックボルト、鋼管支柱、コンクリート吹付などを行います。
- 覆工:トンネル内壁をコンクリートなどで覆い、トンネルを仕上げます。
2. シールド工法工事
2.1 概要
シールド工法工事は、都市部など地表沈下などの影響を抑えたい場所で用いられる工法です。シールドマシンと呼ばれる巨大な機械を用いて、掘削と同時にトンネル壁を構築していきます。シールドマシンという回転するカッターヘッドで岩盤や玉石を細かく砕き、細かくなった土砂は付随するスクリューコンベアで搬出します。
2.2 長所と短所
長所
- 地表沈下などの影響が少ない
- 工期が短い
- 安全性の高い施工が可能
短所
- 断面形状が円形に限られる
- 地盤条件によっては適用できない
- 費用がかかる
2.3 施工手順
シールドマシンの組み立て:シールドマシンをジャッキで押し出しながら、掘削と同時にトンネル壁を構築していきます。
掘削:シールドマシンのカッターヘッドで土砂を掘削します。
トンネル壁の構築:セグメントと呼ばれるコンクリート製のブロックを並べて、トンネル壁を構築します。
- 地盤改良:必要に応じて、トンネル周辺の地盤を改良します。
3. TBM工法工事
3.1 概要
TBM工法工事は、山岳工法とシールド工法の長所を活かした工法です。TBMというシールドマシンをさらに巨大化させて高速化を可能にした機械を使用して岩盤を効率的に掘削していく工法です。
3.2 長所と短所
長所
- 山岳工法とシールド工法の長所を活かした工法
- 硬い岩盤を効率的に掘削できる
- 大断面のトンネルを構築できる
短所
- TBMの導入費用がかかる
- 地盤条件によっては適用できない
3.3 施工手順
- TBMの搬入:TBMをトンネル坑口まで搬入し、組み立てます。
- 掘削:TBMのカッターヘッドで岩盤を掘削します。
- トンネル壁の構築:セグメントと呼ばれるコンクリート製のブロックを並べて、トンネル壁を構築します。
- 地盤改良:必要に応じて、トンネル周辺の地盤を改良します。
3. 施工手順
トンネル工事の施工手順は、工法によって異なりますが、一般的には以下の通りです。
- 準備:施工計画の作成、資材の調達、人員の配置などを行う。
- 掘削:選定した工法を用いて、トンネルを掘削する。
- 支保:掘削したトンネルを支えるために、ロックボルト、鋼管支柱、コンクリート吹付などを行う。
- 覆工:トンネル内壁をコンクリートなどで覆い、トンネルを仕上げる。
- 設備工事:照明、換気、排水などの設備を設置する。
4. 最新の技術
トンネル工事の技術は日々進化しており、以下のような最新の技術が導入されています。
- 3D-BIM:3Dモデルを用いて、トンネルの設計、施工、管理を効率化する技術。
- NATM:地山の自重を利用してトンネルを支える工法。
- TBMの自動化:TBMの自動化技術が進み、無人での掘削が可能になりつつある。
5. 施工管理技士の役割
施工管理技士は、トンネル工事における安全かつ効率的な施工を実現するために、以下の役割を担います。
- 施工計画の作成:工程表、人員配置、資材調達など、施工計画を作成する。
- 施工監理:施工現場を監督し、安全性の確保、工程管理、品質管理を行う。
- コスト管理:予算内に収まるように、コスト管理を行う。
- 関係者との調整:発注者、設計者、施工業者など、関係者との調整を行う。
6. 安全対策
トンネル工事は、落盤、ガス爆発、湧水などの危険が伴うため、以下の安全対策が重要です。
- 安全教育:作業員への安全教育を徹底する。
- 安全設備の設置:ヘルメット、安全帯、防護服などの安全設備を着用する。
- 安全管理体制の構築:安全管理責任者を設置し、安全管理体制を構築する。
7. 環境対策
トンネル工事は、騒音、振動、粉塵などの環境負荷を発生させるため、以下の環境対策が重要です。
- 騒音・振動対策:防音壁、防振マットなどの対策を講じる。
- 粉塵対策:散水、集塵などの対策を講じる。
- 環境モニタリング:騒音、振動、粉塵などの環境
8. コスト
トンネル工事のコストは、トンネルの長さ、断面形状、地盤条件、工法などによって大きく異なります。一般的には、1億円~数百億円程度かかります。
9. 法令
トンネル工事には、以下の法令が適用されます。
- トンネル法:トンネル工事に関する基本的な事項を定めた法律。
- 建設工事施工管理技士法:施工管理技士の資格に関する法律。
- 労働安全衛生法:労働災害の防止に関する法律。
- 環境影響評価法:環境への影響を評価するための法律。
10. 将来展望
トンネル工事は、今後もインフラ整備や災害復旧などに必要不可欠な技術であり、以下の分野で発展していくことが期待されています。
- 技術革新:3D-BIM、NATM、TBMの自動化などの技術革新が進む。
- 国際化:海外でのトンネル工事への参画が進む。
- 環境への配慮:環境負荷低減への取り組みが進む。
11. 専門知識
トンネル工事には、以下のような専門知識が必要です。
- 地質学:地盤の性質や構造に関する知識。
- 土木工学:トンネルの設計、施工、管理に関する知識。
- 機械工学:掘削機械や設備に関する知識。
- 電気工学:トンネル内の電気設備に関する知識。
- 環境工学:環境への影響評価や対策に関する知識。
12. 資格
トンネル工事に関わる主な資格は以下の通りです。
- 建設工事施工管理技士:トンネル工事の施工管理を行うための資格。
- 一級土木施工管理技士:高度な土木工事の施工管理を行うための資格。
- トンネル技術者:トンネルに関する専門知識を持つ技術者。
13. まとめ
トンネル工事は、地盤条件、施工条件、予算などを考慮して、最適な工法を選択することが重要です。施工管理技士は、それぞれの工法の特徴を理解し、安全かつ効率的な施工を実現するために責任を持って取り組む必要があります。