COLUMN
コラム参照:東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」2024年9月5日
2024年の調査によれば、日本の建設業界は依然として深刻な人手不足の状況にあります。調査に参加した企業の約8割(79.2%)が「人手が不足している」と回答し、運輸業の83.3%に次いで高い割合を示しています。また、建設業においては、人手不足の深刻度が「非常に深刻(廃業のおそれ)」または「深刻(事業継続に支障がでるおそれ)」と答えた企業が65.5%に達しており、事業の継続自体に影響を及ぼすほどの状況です。
特に中小企業においては、深刻度が高く、人手不足が原因で「事業運営に支障が出るおそれがある」との回答が全体の61.3%、「廃業のおそれがある」との回答も4.2%あり、業界全体での問題の深刻さが浮き彫りになっています。
こうした人手不足の問題に対処するため、建設業界ではシニア人材の活用が急務となっています。調査結果によると、シニア人材(60歳以上)の受け入れに積極的な姿勢を示している企業は少なくありません。具体的には、建設業において、「既に外部シニア人材を受け入れている」企業が25.5%であり、さらに「適当な人材がいれば受け入れたい」と考える企業は35.2%に上ります。これを合わせると、約6割(60.7%)の企業がシニア人材の受け入れに前向きな姿勢を示しています。
また、シニア人材を積極的に受け入れている企業の中で、その採用ルートとして「公的職業紹介」(62.7%)や「従業員による紹介」(47.3%)が多く利用されています。これは、リファラル採用のメリット(採用コストの抑制、ミスマッチの低減など)が中小企業のニーズに合致しているためと考えられます。
建設業界におけるシニア人材の雇用状況について、シニア人材の割合が「3割以上」とする企業は、全体の25.2%に上ります。特に従業員が20人以下の企業では、シニア人材の割合が3割以上である企業が32.8%に達し、小規模な企業ほどシニア人材の雇用が進んでいることが分かります。
さらに、シニア人材の雇用を強化・拡充したいと回答した企業の81.6%がその理由として「人手不足の解消」を挙げています。これに加え、62.8%の企業が「スキルやノウハウ、人脈の活用」を期待しており、42.5%の企業が「現役従業員の指導・育成」をシニア人材に担ってもらいたいと考えています。
シニア人材の受け入れに対しては、多くの企業が課題も感じています。具体的には、「健康面・安全面への配慮」が71.8%で最も多く挙げられています。次いで、「担当業務の設定」(38.7%)や「働き方の設定」(31.8%)、「シニア人材自身の意識(プライドやこだわり)」(32.3%)といった課題が続いています。
これらの課題を解決するためには、企業側での柔軟な働き方の導入(勤務日数・時間、テレワーク、副業・兼業など)が求められます。また、シニア人材の意向に合わせた業務内容の調整や、健康・安全面への配慮が重要となります。これにより、シニア人材がより安心して働ける環境を整えることが可能となり、人手不足解消への一助となるでしょう。
建設業界においては、シニア人材の受け入れは人手不足を解消するだけでなく、その豊富な経験や知識を活用することで、業務効率の向上や若手社員の育成にもつながる可能性があります。企業がシニア人材の活躍を推進するためには、年齢に関係なく働ける環境の整備が不可欠です。
また、「定年を超えた継続雇用の措置」を講じている企業が建設業界では79.1%に達しており、「定年はない」とする企業も37.2%と高い割合を示しています。このことからも、建設業界では既にシニア人材を長く活用する意識が根付いていると言えます。これらの施策を更に強化・拡充することで、シニア人材の受け入れ体制を一層充実させることができるでしょう。
建設業界の人手不足は依然として深刻であり、特に中小企業においては事業の継続に影響を与えるレベルに達しています。シニア人材の活用は、このような人手不足に対する効果的な解決策の一つであり、企業側の積極的な受け入れと柔軟な働き方の導入が求められます。シニア人材の豊富な経験を活かしつつ、年齢に関係なく働ける環境を整えることで、建設業界全体の活力向上につながると我々は信じています。
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